fluctuation’s diary

理系院生の思考のゆらぎ

三題囃「緑」「パズル」「バカな流れ」

「ただいま」

扉を閉める。誰もいない真っ暗な部屋からは当然返事は来ない。それもそのはず。彼女とは先月別れたのだ。あの温かみのある歓迎はもうない。心まで暗雲が立ち込める。仕事の疲労も相まって気分が落ち込んでいるようだ。このままではいけない。気持ちを無理やり切り替えるかのように、明かりをつける。隅々まで光が染み渡り、白い壁を真冬の明朝に輝く薄氷のように照らした。急に部屋が広くなったように感じた。いや光のせいだけではない。彼女の好きだった花もよく二人で埋もれていた緑のクッションも全てこの部屋から消え去ったのだった。やはりうまくいかないものだ。ため息が溢れる。女性の感情はパズルのように難解だ。いやパズルよりもタチが悪い。正解が用意されていない場合だってあるのだから。あの別れの原因もそうだった。なのに正解があるはずだと思い込んで考えて間違えて嫌われた。これならあのバカな流れに身をまかせ、何も考え無い方が幸せだったかもしれない。ベッドに倒れ込みそっと目を伏せる。泉から静かに溢れでてくるような涙を瞼でそっと押さえ込むように。あわよくば夢の中であの幸せだった日々を振り返られるよう願いながら。

 

 

 

アウトプット能力を高めるため、三題噺に挑戦することにしました。はてさていつまで続くことやら。